この記事は、2025年2月10日に更新しました。
- 経営・管理ビザにおいて、具体的にどんな書類を提出すべきか知りたい方
- 逆に入管側は提出された書類から何を見ているのかを知りたい方
- 実際の提出資料を確認したい方

この記事を書いた人
行政書士 Jin JaeHo(韓国人の行政書士)一児のパパ
2014年開業
入管業務が専門
不許可案件、リカバリー案件に豊富な実績あり。
今回の記事では、経営・管理ビザの実際の提出資料を解説します。
提出資料は、単に「これが必要ですよ!」ではなく、その資料を何のためにつけるのか実例で解説しますので、最後まで付き合ってください。
経営・管理ビザの申請書類は、入管のカテゴリー(会社の規模などで区分されている)別に提出する資料が異なるので、まずは、このカテゴリーを理解する必要があります。これについては、以前の記事をご参照ください。
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以下は、私が実際入管に提出した書類紹介しながら、解説します。
1.経営・管理ビザ、実際の資料の添付例


(1)事案と前提条件
以下の説明は、以下の前提条件で解説します。
<申請の種類>
・留資格認定証明書交付申請(カテゴリー4)
<会社の類型>
・合同会社設立
・社名:合同会社「JKコーポレーション」
<役員構成>
・韓国の法人の代表(代表社員)(以下、KIM「氏」)が日本でも代表となる
※代表社員とは、株式会社における代表取締役と同じの役職。
・日本には、業務執行社員(以下、「PARK氏」)がいる
(業務執行)社員は、日本在住で身分系の在留資格(永住者)を持っている
<資本金>
代表社員が500万円出資。
日本の業務執行社員が1万円出資。(計、501万円)
<事業所>
(経営・管理ビザの独立性・継続性を満たす)シェアオフィス
<業務内容>
日本法人の事業内容は、韓国から雑貨などの輸入し、日本のECサイトで販売する事業。
<その他>
「B氏」名義で事務所確保、資本金の出資、事業のための古物商の免許を取得。
まだ商品を輸入してないので、事業の実体性などが厳しく審査されるケース
(2)経営・管理ビザの実際の提出資料の一覧



以下は、私が経営・管理ビザ申請を行った際、実際に入管に提出した添付書類の一覧表になります。人の名前、会社の名前はアレンジしています。
2.必要書類を提出することについての注意点



私が書類を提出するときには、意識するのは以下の2つです。
1.書類は、入管の審査ポイント基準にまとめる
2.書類を提出する目的を入管の審査官と共有する
(1)書類は、入管の審査ポイント基準にまとめる
書類をまとめる基準となるのは、入管法、在留審査要領(入管の内部審査ルール)、経営・管理ビザのガイドラインであり、これらの基準を書類で一つ一つ丁寧に疎明していくリスト作成(書類づくり)が重要です。以下、入管の審査ポイント
1.申請人の学歴を含む(経歴)犯罪歴、在留歴
2.資金の出所(蓄積方法)及び資金の流れの説明
3.事業所の説明
→事業所は、「独立性」「継続性」が担保されているのかがポイント
4.事業内容及び(事業の)実体性の説明
→実質的に事業を行うのかについて、できる限り客観的で明確な資料を準備するのがポイント
5.事業の継続性及び安定性の説明
→ビジネスモデル、収益性、資金繰りなどで、事業の継続性と安定性を説明するのがポイント
(2)入管の審査官が一番中心的に審査する事項を先回りして準備しておく



上記1~5どれも重要審査ポイントではありますが、入管が一番心配しているのは、「偽装経営・管理ビザ」です。よって、入管は、経営・管理ビザにおいて、「4.事業の実体性」があるかどうかを一番中心的に見ます。
要するに、お金さえあれば、会社は作れるし、会社が作れたら、会社の法人登記簿なども取得できます。事業所も同じで、お金さえあれば、経営・管理ビザの基準に沿った事業所の契約もできちゃいます。
極端な話、これらは、事業を行う意思が全くなくても出来てしまいます。
しかし、適切なビジネスモデルによる的確な事業計画書、収益予想、取引先や利害関係者との契約書、実際のインボイス書類、シッピングリスト、コンテナなどに積まれている実際の商品の写真、関連特許、事業を行うための各種ライセンスなどはどうでしょう?
事業を行う意思がなくてこれらのことを作成もしくは取得するのは、逆に難しく思いませんか?
入管の審査官も同じです。なので、できる限り、 その事業を行うために何が必要なのか徹底的に考えて、事業計画書及び収益計算をし、取引先や利害関係者との契約書などを締結することにより、事業の実体性を疎明していくのが経営・管理ビザにとって一番重要です。
(3)書類を提出する目的を入管の審査官と共有する
上記の実際の添付書類一式では、書類を提出目的ごとに分けた上で、「〇番~〇番は、○○のために提出」と記載しています。



これは、あくまでも私のやり方で、経営・管理ビザの審査ポイントをきちんと抑えて、提出すれば、何のために書類をつけたのか、説明は(基本的に)不要です。
しかし、場合によっては、入管の審査官が、「この書類何で付けたの?」と疑問に思う場面もあるかと思います。こうなると、審査に時間がかかるし、申請人側が意思が明確に伝わらないため、審査にマイナス影響を与えるかもしれません。
これらの事態を避けるために、私の場合は、書類を付けた目的を明記しています。
3.提出書類の解説と入管の審査ポイント
- 1.申請人の基本情報
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申請人の基本情報は、以下の1~4です。
- 在留資格認定申請証明書交付申請書
- 申請人のパスポート・在留カードの写し
- 申請人の大学の卒業証明書・成績証明書の写し及びその訳文
- 履歴書
入管は、これらの資料で、申請人の基本情報、過去の在留歴、犯罪歴などを審査します。
3,4は、経営者からの「経営・管理ビザ」の申請の場合、必須要件ではありません。ただ、申請人の職歴と今回の事業との関連性があり、つけた方が審査のプラスになるので、付けただけです。
また、過去に日本に在留した経歴がある方で、何か問題があった方は、きちんと報告した上、適切な説明しましょう。犯罪歴も同じです。
そもそも入管法5条上の上陸拒否事由に該当する方は、申請自体が無理でしょう。 - 2.(会社)資本金の出どころと資金の流れの説明
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資金についての前提条件
- 資金500万円の内、300万円は、自己資金
- 自己資金は、申請人が韓国で就労していた時、貯蓄していた資金
- 資金500万円の内、200万円は、他人資金
→申請人の父から借りたお金
以下、実際の添付書類
5.申請人の過去3年間の給与所得の証明書(韓国)及びその日本語訳
6.申請人の過去の給与取引記録(韓国)及びその日本語訳
7.残高証明書(申請人名義の通帳)及び日本語注釈
8.金銭貸借契約書及びその日本語訳
→申請人は、事業の立ち上げに先立ち、申請人の父から事業資金の200万円を借りています。
9.資金提供者(申請人の父)の残高証明書及びその日本語注釈
10.事業用通帳の写し
→資本金が振り込まれている当時の通帳。名義は、合同会社「JKコーポレーション」の業務執行社員である「PARK氏」のものです。ポイント
1.両親から資金の提供を受けたとしても、それが「金銭貸借」である場合、弁済義務が生じるので「借用書」は必須です。
「無償贈与」でもいいですが、そのときは、「贈与契約書」の作成と、確定申告時に「贈与税」の申告が必要になります。どちらでもよいのですが、一般的には、「金銭貸借契約書」をよく使われています。
2.上記、9は、資金提供者(申請人の父)の資力を疎明する資料として提出しています。
3.上記、10は、資本金の流れを説明するために付けています。 Jinせんせい実は、資金提供者の資力が分かる資料は、必須資料ではありません。申請人が自己資金が半分以上で、事業の実体性があれば、提出時には省略し、入管から要請があったとき付けてもいいでしょう。
ただし、入管の担当審査官によっては、厳しい審査官もいるので、私の場合は、最初からつけています。
ちなみに、上記の案件の場合、資金提供者は、預貯金の他、不動産も持っていますが、預貯金のみで十分な預金があったので、不動産登記簿までは付けませんでした。- 3.事業所の独立性・継続性の疎明資料
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以下、実際の添付書類
11.事業所の「施設利用契約書」の写し及びその補足説明
12.事業所の写真及び間取り図11.事業所の「施設利用契約書」につき、申請人は、シェアオフィスを契約したが、そのシェアオフィスの契約書は、「賃貸借契約書」ではなく、「施設利用契約書」であった。
しかし、「施設利用契約書」の内容は、事業所の独立性や継続性に疑義が生じないものであったため、その旨を説明をする共に、「施設利用契約書」を提出。 - 4.事業内容及びその実体性の疎明資料
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以下、実際の添付書類。
13.履歴事項全部証明書
14.法人設立届出書一式
①法人設立の届出
②給与支払い事務所等の開設届出書の写し
③源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書等の写し
④青色申告の承認申請書
15.合同会社「JKコーポレーション」の古物商免許証の写し
16.事業用通帳の写し
17.現行定款
18.取引先との契約書など
①海外代理店契約書
→合同会社「JKコーポレーション」は、商品「A」につき、韓国の製造元会社である「ソウル商事」より(日本を含む)海外販売代理店契約を締結しています。
②商品供給契約書
→合同会社「JKコーポレーション」は、商品「B」につき、商品「B」の販売代理店「釜山商事」より商品供給契約を締結しています。
③開運会社との輸送契約書
④通関委託契約書
輸入商品につき、日本の通関業者と締結した業務委託契約書になります。



冒頭でも言いましたが、私が経営・管理ビザにおいて、一番力入れて作成するのが2つあります。
1.事業の実体性
2.収益計算と売上の根拠
ただし、事業の実体性がなければ、収益計算や売上の根拠も絵空事になってしまうので、まずは、しっかりと事業の実体性を丁寧に説明し、それを裏付ける資料を提出するのが一番重要です。
あくまでも私の独自の分類ですが、私は、事業の実体性を2つに分けて考えたりします。
1.客観的な事業の実体性、以下その具体例
・会社の法人登記簿謄本
・設立の届出
・事業所の賃貸借契約書
・事業所の写真
・資本金(資金)の証拠資料など
2.実質的な事業の実体性、以下その具体例
・事業計画書(収益計算書・資金繰り表)
・会社の決算書(会社を設立して、1期目以降の申請の場合)
・取引リスト
・顧客リスト(BtoBの場合)
・物品供給契約書及び(取引作成)仕入単価表
・(実際、商品の納入及び購入があった場合)商品の納品書・領収書
・インボイス関連資料、通関関連資料・シッピングなどの資料
・コンテナの積み込み作業の写真
・事業関連の資格(ライセンス)
・事業関連の経歴・事業のノウハウ
・代理店契約書
・業務委託契約書など
経営・管理ビザにおいての許可の可否は、「実質的な事業の実体性」に関わる資料の妥当性にかかっていると言っても過言ではありません。
- 5.事業の継続性及び安定性の疎明資料
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「事業所要件」にも事業の継続性と安定性というの審査がありまうが、本当の意味での事業の継続性と安定性は、事業の実体性の他、事業計画書・収益計算などの面から説明する必要があります。
以下、実際の添付書類。
19.事業計画書
20.収益計算書及び資金繰り表(概算額)
21.(役員報酬額に関する)同意書19の事業計画書は、主に以下の項目で作成するのが多いです。
- 日本法人の設立経緯・設立目的・事業概要の説明
- 事業概要
- 市場分析
- 商品・サービス説明
- 顧客ターゲット
- マーケティング戦略
- 取引先情報
20. 収益計算書及び資金繰り表においてのポイント
・収益計算表において、売上は、その根拠を明記すること
・売上原価には、原価の内訳を明記すればなお良い
・売上原価、営業利益、税引前当期純利益などの収益性をパーセンテージで説明
21.役員報酬についてのポイント
役員報酬をいくらにするかの明確な基準はありませんが、少なくとも申請人が日本で安定的に生活していくだけの報酬は受け取るべきです。節税のため変に役員報酬を低くするのは絶対にやめましょう。 Jinせんせい個人的には、上記19と20の資料でどちらが重要なのかと言いますと、20の資料が重要です。
実務上では、数字に明確な根拠があり、かつ、売上根拠に妥当性がある場合、設立経緯、事業概要(ビジネスモデル、収益の仕組み)を記載の上で、別紙で、これからの「収益計算書」「資金繰り表」(2年~3年分)を作成するだけで、許可されるケースも多いです。
よって、上記の事業計画書はケースバイケースで説明する項目を減らしたり、増やしたりしており、19の事業計画書の項目全部が必要な訳ではありません。余談ですが、会社を設立すると、役員も健康保険、厚生年金(保険)が加入義務が生じます。
私のお客様で、健康保険、厚生年金の保険料は、算定基準が役員報酬なので、役員報酬が少ないと健康保険、厚生年金も安くなるのではという質問がありましたが、半分は正解で半分は不正解です。
実際は、健康保険、厚生年金の算定基準は「標準報酬月額」という区分に基づいて決まります。
よって、健康保険は、大分安くなりますが、厚生年金はさほど変わりません。
それに、役員報酬を下げたら、ビザ更新するとき、更新できないこともあるので、生活できる程度の役員報酬はもらった方が賢明です。 - その他
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22.法務省入国管理局長、三浦正晴さまの通達
(一定のガイドラインがあるとは言え)入管が行う処分は、「裁量行為」といい、許可するか否かは入管の広範な裁量に左右されます。以下、この通達の一部内容になります。
- 在留資格の変更や在留期間の更新については、申請者の家族状況、滞在状況、所属する企業等の営業内容の変更などの事情を総合的に考慮して判断することが必要。
- 申請人から提出された資料等のみで判断するのではなく、必要に応じて追加資料の提出を求めたり、実態調査を行ったりすることが重要。
- 不利益処分を行う前に、申請人に対して反証の機会を与えるべきで、申請人に反証の機会を与えることなく不利益処分を行うことは避けるべきとされています。
Jinせんせい以下は、余談です。
私がこれを付けたのは、入管の審査官の職権の濫用?!(らんよう)を避ける狙いがありました。
要するに、申請人に不利益処分する場合、「通達」のとおり、「弁明の機会」を与えるように促すために付けました。
入管業務の実務家である、私の個人の意見ですが、入管が「弁明の機会」を与えずに「不許可」にしたとしても、入管法が行政手続法の適用除外になっている以上「違法」までは言えないかと思っています。
しかし、「妥当性」は欠いていると思っております。いくら、入管法が行政手続法の適用除外である理由のみで、申請人側に何の「弁明の機会」も与えないのは、入管法も行政法の一種であること、また、入管内部の通関からみて不適切だと思っております。



ちなみにこの事案、経営・管理ビザ申請のため、書類準備の約1年前から相談を受けた案件なので、申請人も私のアドバイス通り動いてくれたので、スムーズに申請でき、許可が出ました。
4.まとめ
- 申請人の職歴、学歴
事業の関連がありそうなところをピックアップして丁寧に説明し、日本での事業内容の実体性を補強する。 - 資金の出所(蓄積方法)及び資金の流れの説明
・資金をどのようにして形成したかの説明
・形成した資金の証拠資料
・資金はどのような流れで、事業用通帳に入金されたのかの流れの説明と、その証拠資料 - 事業所の説明
→事業所は、「独立性」「継続性」が担保されているのかがポイント - 事業内容及び(事業の)実体性の説明
ある意味、ここが勝負ところ。実質的に事業を行うのかについて、できる限り客観的で明確な資料を準備する - 事業の継続性及び安定性の説明
→ビジネスモデル、収益性、資金繰りなどで、事業の継続性と安定性を説明するのがポイント



経営・管理ビザは、申請する前の準備が大変な申請ではありますが、要件をしっかり抑えて、申請すれば比較的に許可されやすいビザでもあります。
当事務所は、経営・管理ビザ申請に豊富な経験と実績がありますので、自信もって対応することができます。経営管理ビザについて悩みのある方は、ぜひ当事務所へ気軽にご連絡ください。
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