この記事は、2025年1月27日に更新しました。
・経営・管理ビザにおいて詳しい審査要件が知りたい方
・特に事業規模の証明について知りたい方

この記事を書いた人
行政書士 Jin JaeHo(韓国人の行政書士)一児のパパ
2014年開業
入管業務が専門
不許可案件、リカバリー案件に豊富な実績あり。
この記事では、経営・管理ビザの「事業所要件」に引き続き、「事業の規模」にフォーカスして、徹底解説いたします。

1.事業規模の3つの類型
おさらいですが、経営・管理ビザの事業規模については、以下の3つの類型があります。
イ。常勤の職員を二人以上雇うこと
ロ。資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。
ハ 。イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。
イ。常勤の職員(以下、「正社員」)を二人以上雇うこと

二人の正社員を雇うと、人件費として、最低でも年間500万円以上の資金が必要であり、言い換えれば、500万以上の資金が事業に投資されたことになります。
①正社員2人を雇用する意義
- 事業の規模と実体性
-
常勤の職員を二人以上雇用することは、業務量は少なくとも3人(経営者含む)の業務量があることになるので、事業の規模と実体性の有効な指標となります。
- 事業の継続性
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正社員を雇用し、その正社員の営業活動などで売上が立てられ、会社はその売上で人件費を支払うことは、事業の継続性の有効な指標となります。
- 経営・管理活動の実質性
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経営・管理ビザの取得要件として、経営・管理ビザを持っている経営者は、「事業の経営又は管理に実質的に参画していること」が求められます。
これは、単に役員に就任しているだけでなく、事業の運営に関する重要事項の決定、事業の執行、監査などの業務に実際に従事していることを意味します。
従業員を雇用することは、入管に対して経営者が「経営・管理」業務に専念できるとアピールできる重要な証拠になります。
②正社員2人雇用についての注意点

・社会保険・労働関係法令の遵守することで雇用主の負担が増えます。
正社員を雇用する場合、労働関係法令や社会保険関係法令を遵守する必要があり、具体的にいいますと、労災保険、雇用保険、医療保険、厚生年金などの加入義務が生じます。
正社員の社会保険加入義務が生じた場合、雇用主も保険料を適切に納付する必要があり、負担が増えます。
ただし、これらの法令を遵守していることは、事業の適正な運営を示す上で、プラスに評価されます。
・正社員の対象になるのは、日本人か、身分系(居住系)の在留資格を持っている外国人のみ。
正社員を雇用する場合、その対象となるのは以下の通りです。
- 日本人
- 特別永住者
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
よって、就労系の在留資格(技術・人文知識・国際業務、技能など)を所持している外国人を雇ることはできません。
ただし、経営・管理ビザの許可がおりた後は、就労系の在留資格を持っている外国人を雇っても、海外から新たな外国人を呼び寄せても問題ありません。
③正社員2人を雇用し、経営・管理ビザ申請することの有用性
実は、正社員2人を雇用し、経営・管理ビザ申請するケースは、ほとんどありません。(私の場合、おそらく他の先生も同じではないかと思います)
なぜなら、実用性もあまりないし、実益があまりないからです。
例えば、タイレストランを開業し、「経営・管理ビザ」の取得を目指している場合、原則、経営者は「経営・管理」業務に専念しなければいけないので、必然的にコックさんとホールのスタッフを雇うことになります。
通常は、コックさんはフルタイム勤務ですが、ホールはそのお店の状況によってアルバイトを3-5人を雇用することになります。
ここで仮に、最初から正社員2人を無理して雇うことになると、お店に投資する金額は少なくてもいいですが、正社員に支払う人件費、社会保険料などの負担が増えます。また、売上が最初から安定的に立てられる保障はどこにもない訳です。これらの理由で通常、正社員を雇うのは、事業がある程度軌道に乗ってからした方が常識的考えです。
それに、日本でレストランの開業することは、いくら少なく見積もっても、年間500万以上は、そのお店に投資されることになります。よって、これだけで、事業規模を満たすことになるので、最初から危険を背負って正社員2人を雇う実益もないことになります。
さらに最も怖いのは、正社員2人を雇った状態で、会社の収益が落ち込むと人件費で会社の経営を圧迫する原因にもなります。
以上、タイレストラン(飲食業)を例に説明しましたが、店舗型ビジネス(小売店、マッサージ店、美容サロンなど)や現場作業が必要なビジネス(工場系、建設系、清掃系のビジネス)は、従業員を雇うことが必須なビジネスであります。このように人を雇うことが必須なビジネスは、年間500万円を投資することで、事業規模要件をクリアしたうえで、人は必要に応じて柔軟にアルバイト社員などを雇った方が賢明なやり方です。
ロ。資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること。


口は、事業が会社形態で営まれる場合を前提とする規定です。以下、用語を解説します。
- ●資本金の額
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株式会社を設立する際に払込済資本の額(資本金の額)を指します。この資本金は、会社の事業活動の基礎となる資金であり、会社の財産を構成します。
- ●出資の総額
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これは、合名会社、合資会社、合同会社の持分会社が事業のために出資した金額の合計を指します。
- ●500万円以上であることの意義
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この基準は、事業が一定の規模を有していることを示すための最低限の要件です。
500万円以上の資本金または出資金があることで、事業を安定的に運営するための資金基盤がある程度確保されているとみなされます。
しかし、これはあくまで事業規模を判断する上での一つの指標であり、これだけで経営管理ビザが必ず許可されるわけではありません。
まとめると、「資本金の額」は株式会社の設立時の資本金を指し、「出資の総額」は合同会社の社員が出資した金額を指します。これらの金額が500万円以上であることは、経営管理ビザの要件の一つですが、事業の規模や実態を示すための総合的な判断において重要な要素であることを理解しておく必要があります。
株式会社の場合、新株予約権の発行により調達した資金も資本金として計上することが可能です。以下、その条件です(興味のある方のみ見てください)
- 新株予約権の発行によって払い込まれた、返済義務のない払込金であること。
- 将来、新株予約権が権利行使されることで払込資本となる場合、または権利行使されずに失効し利益となる場合でも、資本金として計上することが前提であること。
この場合、投資契約書、払込を証明する書類、資本金として計上する誓約書などの提出が必要となります。
ハ 。イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。
「経営・管理」ビザの事業規模要件の一つである「イ」又は「ロ」に準ずる規模であると認められるものであること」についての具体例は、以下の通りです。
「イ」に準ずる規模

常勤職員が1人しか従事していないような場合に、もう1人を従事させるのに要する費用を投下して営まれているような事業の規模がこれに当たります。
この場合の投資費用としては、概ね250万円程度が必要です。
投資費用とは、店舗や会社の設備、人件費などに投下される費用のことです。
「ロ」に準ずる規模


外国人が個人事業の形態で事業を開始しようとする場合に、500万円以上を投資して営まれているような事業の規模がこれに当たります。
この場合の500万円の投資とは、当該事業を営むのに必要なものとして投下されている総額であり、次の①から③の目的で行われるものがこれに当たります。
① 事業所の確保:当該事業を営むための事業所として使用する施設の確保に係る経費
② 雇用する職員の給与等:役員報酬及び常勤・非常勤を問わず、当該事業所において雇用する職員に支払われる報酬に係る経費
③ その他:事業所に備え付けるための事務機器購入経費及び事業所維持に係る経費

イやロに準ずる規模ではなくても、会社のM&A、事業承継などの場合このロの規定が適用されるケースがあります。
私の事務所の事例で、飲食店を350万円に買い取った事例がありました。この場合、上記「ロ」の出資の総額500万円を下回りますが、飲食店なので当然、スタッフを雇うことになり、家賃も支払うことになります。こうすると年間の出資の総額500万円を遥かに超えます。この事案、許可が出たので、入管は、この事案の場合、「ハ」の要件で判断されたと推測できます。
補足しますと、この事案は、単なる居抜き物件を買い取った訳ではなく、ある程度売上が上がっているお店を譲り受けた形で、直近の確定申告書からある程度収益が見込まれている事案でした。
事業資金の借金の関係性
●原則
会社の事業資金として使われたとしても、会社が借り入れた借金は、原則として外国人が投資した金額とはみなされません。これは、会社が借金を返済する義務を負っており、その借金が直接的に外国人の財産から拠出されたとは言えないためです。
つまり、会社の事業のために借り入れたお金は、たとえそれが事業に使われたとしても、外国人自身の投資額とは見なされないのが原則です。
●例外
しかし、外国人が会社の借入金に対して個人保証をしている場合など、特別な事情がある場合には、その借入金の一部を外国人の投資額とみなす余地があるとされています。
これは、個人保証によって、外国人が会社の借金返済に対して個人的な責任を負うことになり、実質的にその借金が外国人の財産からの支出と同等とみなせるためです。
●個人補償とは
個人補償とは、会社が借金を返済できなくなった場合に、会社の経営者や株主などの個人が、会社に代わって借金を返済する責任を負うことを指します。
外国人が会社の借入金に対して個人補償をしている場合、その外国人は会社の借金返済に対して個人的なリスクを負うことになります。
そのため、個人補償をしている金額を、その外国人の事業への投資額とみなすことができるという考え方です。
●留意点
個人補償がある場合でも、必ず全額が投資額とみなされるわけではありません。
個別のケースに応じて、個人補償の範囲や金額、借入金の使途、事業の実態などを総合的に考慮して判断されることになります。
したがって、この文言は、会社の借入金が必ずしも投資額とみなされない原則を示しつつ、個人補償という特別な事情がある場合には、例外的に投資額とみなせる可能性を示唆していると言えます。



ネットでは、500万円を資本金に会社を設立しないと「経営・管理」ビザ取得は不可能という情報がありますが、それはウソです。
私の場合、依頼主のビジネスモデルによって、法人がいいか、個人事業主がいいかメリットデメリットを伝えたうえで、お客さんが決めることにしています。
例えば、飲食業なら敢えて、個人事業主での経営・管理ビザをお勧めします。なぜなら、法人にすると、個人事業より保険(売上にもよりますが)税負担、経理上の負担がかかるからであります。
逆に、依頼主のお客様のビジネスが法人などのBtoBビジネスや海外取引である場合、個人事業主だと不都合が生じる可能性があるので、法人設立をお勧めしています。
以上、法人設立は、選択肢の一つであり、絶対ではありません。
入管の審査官は、事業規模のイ、ロ、ハ、を判断する時、資本金の額のみで事業規模を判断せず、総合的な判断します。
よって、単なる形式的な要件だけではなく、事業所の確保状況、事業計画、売上見込み、従業員数(いれば)、事業の継続性などを総合的に判断します。
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